こころみ学園訪問記【スタッフ栃木の旅・後編】

2020-01-27

前回に引き続き、昨年11月に訪れた栃木県の社会福祉法人のお話をしたいと思います。
 今回は栃木県足利市にある社会福祉法人「こころみる会」です。

 「こころみる会」は1969年に設立され、就労支援や生活介護、入所施設、グループホームを運営しています。「こころみる会」の目玉は、広大な葡萄農園を自分たちで運営しているということです。利用者と法人スタッフが協働で様々な品種の葡萄を栽培し、この葡萄を使って、利用者ご家族と法人が協力して立ち上げた有限会社「ココ・ファーム・ワイナリー」でワインを醸造しています。そのワインはとても上質で、2000年の九州・沖縄サミットの晩餐会で振る舞われた他、海外首脳を招いた時の夕食会で出されたり、JALの国際線機内食に採用されたりと、その評価は折り紙付きです。

 私は今回、「こころみる会」の原点となった「こころみ学園」(入所・生活介護)とワイン醸造所を見学しました。醸造所では発酵や熟成の過程を見せて頂きましたが、何基もの大きな発酵タンクや熟成樽に圧倒されました。酵母の種類にこだわりを持ち、発酵時の温度・湿度を厳密に管理し、樽で10年単位で熟成させつつ、次々に来る注文と在庫の管理を行い…と、見学前には「東京の作業所」に似た形を予想していた私は「これは企業だ!」と心の中で驚きました。

 「こころみる会」の創設者である川田昇氏が、足利市の特殊学級の生徒たちと共に葡萄畑を作り始めたのは1950年代のことでした。川田氏は彼らの学校の担任教師であり、「知的障がいを持つ彼らが働きながら生きがいを見つけられる場所を作りたい」と願いを持っていました。初めは葡萄を作ることは考えておらず、平らな土地での野菜栽培などを考えていたようですが、資金的余裕がなく、急斜面の土地(38度の勾配!)を開墾することにしました。しかし、急勾配なので水はけが良く、日当たりの良い場所であったことも功を奏し、葡萄栽培に適した土地であることが分かったのです。ワインを作ろうと決めたのは1970年代のことで、それは葡萄の収穫量が安定せず、「ならば保存の効くワインを」と考えたからだそうです。私財を投じて土地を切り開き、逆境をポテンシャルに変える川田氏のパワーに感服します。

 施設を案内してくださった方のお話の中で、「農福連携」と「里山資本主義」という言葉がありました。
 ここ数年、障がいを持つ人たちが農業に携わる「農福連携」を耳にするようになりました。こころみ学園とココ・ワイナリーもそのひとつの形と言ってよいでしょう。しかし、メディアで取り上げられる「農福連携」は、過疎化する農村への労働力供給としての印象が強いように思います。こころみ学園が障がいを持つ人々の自らの活動の場として始まり、今も変わらないことの意義はとても大きいと思います。

 「里山資本主義」は地域エコノミストの藻谷浩介氏による、天然資源を枯渇しないように利用してきた「里山」と経済活動としての「資本主義」をミックスした考え方で、近年注目されています。『社会と事業の継続に重きを置き、お金はほどほどに稼ぐ』経済活動であり、藻谷氏はその基本的な性質を「(自然との)共生」と「循環再生」であるとしています。こころみ学園の葡萄畑では、開墾にともなう伐採樹を椎茸栽培の床に使い、葡萄の樹から落ちた葉は堆肥として使い、葡萄を絞った後の種や皮は家畜の餌として譲っています(餌に混ぜて与えると、臭みの少ない良いお肉になるそうです)。葡萄畑には除草剤を撒かず(開墾以来ずっと撒いていないそうです)、人の手で雑草を刈り取ります。まさに「里山資本主義」の実践と言えるでしょう。

 これらのことから、川田氏に「先見の明があった」とも言えるのでしょうが、大事なのは、川田氏が将来の社会を見据えていたというよりも、自分の目の前にいる教え子たちに「より良い人生を送ってほしい」という強い願いから「こころみ学園」を創始したということだと思います。社会・環境を守るのも大事、でもまずは目の前の人の力になるべし、それは私がこげら会で働きながら自然と考えるようになったことでもあります。

 ココ・ファーム・ワイナリーでは毎年11月に収穫祭が催されます。様々なワインの他、食事や音楽も楽しめます。毎年、大勢の人たちがいらっしゃるそうです。ワイン好きの方はいらしてみてはいかがでしょうか。(yoshiki)

リンク

こげら会 名前の由来
働いている人の声
お問い合わせ・アクセス
採用情報・募集職種

MENU

移動支援/行動援護/ショートステイ
相談支援
放課後等デイサービス
グループホーム
ガイドヘルパー養成講座
行動援護従事者養成研修
採用情報(新卒/中途/パートタイム職員)