あの花束のお返しに【スタッフ・こげら日記】
2024-02-05
皆さん一度は人から花束をもらったことがあると思いますが、
一番思い出に残っている花束はどんな花束ですか?
誕生日、卒業式、プロポーズ…
そんな特別な日じゃなくて、いつもありがとうの花束も嬉しいものですよね。
私は数年前ポラリスの立ち上げとともに
元々所属していた放課後等デイサービスから異動することになったのですが、
その当時小学校6年生だったYさんから
『羊さん、卒業おめでとう』と花束をもらったことがあります。
お花屋さんでわざわざ購入してきてくれたであろう
15㎝くらいのカラフルな可愛らしい花束。
お母様が気を遣ってくださったのだろうと最初は思っていたのですが、
なんとYさん本人が『羊さんが卒業するからお花を贈りたい』とおっしゃって
購入しに行ったと聞き、余計にその花束が愛おしく思えたのを
今でも鮮明に覚えています。
私にとってはその花束が今までの人生で一番嬉しかった花束です。
その方が不登校になって、
放課後等デイサービスにも来られなくなってしまったと聞いたのは
それから1年半後くらいのことでした。
Yさんとご家族がどう過ごされているのか気になって
一度ご自宅に訪問させていただいたこともありましたが、
その後はお会いすることができないまま月日が過ぎていきました。
ところがご縁というのは突然やってくるもので、
ひょんなことから“Yさんのお母様の相談に乗って欲しい”と頼まれ、
またお会いできるチャンスがやってきたのです。
久しぶりにYさんのご自宅を訪問させて頂くと、
以前お会いした時から色々な意味で大きくなったYさんと再会を果たしました。
“忘れられていたらどうしよう…”と若干緊張しながら
「Yさんお久しぶりです、覚えてますか?」と声をかけると
『うん、羊さん』『恥ずかしいな』とあの頃と変わらない照れ顔で答えてくれました。
それからはポラリスの仕事として関わらせて頂けることになり、
毎月ご自宅を訪問してお会いするようになりました。
一緒にお茶を頂いたり、お気に入りのおもちゃを見せてくれたり、
時にはベーゴマや野球をして遊んだりもしました。
半年以上かけて少しずつ関係性を築いていったある日の訪問時、
とても機嫌が良さそうだったので
勇気を出して私はYさんを外出に誘ってみることにしました。
「Yさん、今度羊さんと一緒に散歩に行きませんか?」と問いかけると、
Yさんは笑顔で『OK!』とグーサインを返してくれました。
「じゃあもう来週行きましょう!○日はどうですか?」と
すぐさまお母様と一緒に予定日を決めて、
久しぶりに家族以外の人と外に出る日を設けました。
迎えた初散歩の日。
ご自宅にお伺いすると笑顔のYさんが玄関で待っていてくれました。
行く気満々のようだったのですぐにそのまま外出することにし、
いつもお母様と歩いている散歩コースを教えてもらいながら
近くの公園を目指しました。
出発してすぐは私の腕にYさんが腕を回して腕組みし、
ニコニコ笑顔で歩いていましたが、公園に入ったところくらいから
段々と顔が強張り滝のような汗が出始めました。
周りから聞こえてくる子供たちの声、すれ違う自転車や散歩中の犬など、
様々な刺激を受けて緊張やストレスが高まっているのを感じました。
ベンチに座って休み、一緒にアイスを食べて帰宅しましたが、
帰路はとくにかく早く帰りたいと駆け足で帰っていきました。
ご自宅に到着すると和室でぐったりと寝そべり、お茶を飲んで休憩。
お母様との散歩でもこのように消耗されるそうで、
近所への散歩でも今のYさんにとっては大冒険です。
ましてや今日は家族以外の人との久しぶりの外出ですからより疲れたことでしょう。
それでも帰り際に「また一緒にいつかお散歩行ってくれますか?」と聞くと
Yさんは『うん!』と言ってくれたのでした。
これからは地域の方とも少しずつ交流を持っていく為に
訪問系のサービスを利用することになっているYさん。
本人のペースに合わせて一歩一歩、時には二歩戻ることがあってもいいので、
少しずつ一緒に歩んでいきたいと思っています。
あの時の花束のお返しに、いつかYさんの行きたいところに
一緒にお出かけできる日を願って…。
(sheep)