地域の目【スタッフ・こげら日記】
2023-05-22
30分間エレベーターに閉じ込められてしまった。
正しくは閉じ込めてしまった。
ある晴れた日の土曜日。ガイドで図書館へ行きました。
この日のご利用者は、拒否を言葉ではなく態度で示されます。
「動かない」といった態度で。
できるだけご本人の意思に沿って動きたいものですが、
時間や場所の制限は必ずつきまといます。
この日もご利用者が大好きな絵本を目当てに図書館に行きました。
終わりの時間が迫ってきて、帰路にエレベーターを利用した矢先…
事は起きました。
エレベーター内で、「トイレ行きましょうか」とお声かけしてしまったのです。
彼女はその言葉を聞くや否や、身体にグッと力を入れ、
そのまま身体を壁に寄せました。
実はエレベーターに乗る前に、ご利用者はトイレに行くのを一度拒否していたのです。
自分の不手際を責めつつ、これは待つしかないと覚悟を決めました。
とはいえ、ここは公共の場でありエレベーターという狭いスペース。
社会ルールを鑑みて早く降りなくては…と焦ってしまいます。
しかし、そうやって支援者が焦って急かせば急かすほど
ご本人は緊張し余計に固まりが強くなります。
そのため、「何とかしなくては!!」の念が伝わらないように
なるべくすまし顔で待つことに徹しました。
エレベーターが開くたび、人の目が気になります。
周囲にもご本人にも申し訳ないという自責の念、
トラブルを招くかもしれない恐怖、
そうした負の感情がじわじわと心を覆います。
ところが、この状況に対して攻撃的な人はおらず
周囲の方はそっとしておいてくれました。
小さいお子さんの手を連れ赤ちゃんを抱っこしている女性に声を掛けられました。
「何かお手伝いできますか?」と一言。
瞬間、目頭が熱くなりました。
お礼を述べ「でも、ご本人の気持ちに整理がつかないと…」
と上擦った声で返すのが精一杯でした。
「私一人だけじゃないんだ」と安心したのを覚えています。
その後、少しずつご本人の気持ちが降りる方向に向かい、
30分ぶりの外の空気を吸うことができました。
「支援」は私1人だけではできず、
チームひいては社会の協力でやっと成り立つ。
それを体現したような経験でした。
あの時の女性に改めて礼を言いたいですし、
今ある「理解・協力」という灯を絶やさないようにしていきたいです。
(rien)